フィンランド教育の制度と特徴とは|歴史から問題点まで徹底解説

先進国の主流である「詰め込み式」教育を採用していないにも関わらず、高い学力水準を維持する点でフィンランドの教育の在り方は過去度々注目され報道や書籍で取り上げられてきました。近年では学力水準が低下傾向にあるためか注目されることも少なくなりましたが、改めてフィンランド教育の特徴や制度について紹介します。

フィンランドは高い学力水準を維持し続けていた

経済協力開発機構(OECD)加盟国の15〜16歳の生徒を対象に行われる読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの分野についての学習到達度をはかるPISA(国際学力調査)でフィンランドは過去(2009年以前)上位の成績を収めてきていました。

読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーについて、2006年の調査ではそれぞれ2位・2位・1位、2012年の調査では6位・圏外・5位、最新の2018年の調査では7位・圏外・6位となっており、近年は徐々に順位が下がってしまってはいます。

フィンランド教育の歴史と制度

フィンランドはもともと裕福な子供しか教育を受けられない段階からスタートをしています。義務教育法が導入された1921年に誰でも平等に教育を受けられるようになり、1972年の教育制度の全面的な変更で総合学校6年と中等教育3年を合算した9年間が義務教育となりました。これには、1968年に「持てる資源のほとんどを教育に投資する」「男女、家族の背景、財力は関係なく、万人に教育の機会を与える」ことを大胆に行なった改革があったといわれます。

また、1994年には29歳で教育相となったオッリペッカ・ヘイノネン(以下、ヘイノネン氏)によって、学習量を1/3に削減・教科書の検定を廃止・教員資格に修士号を要求、3つの改革が実行され、教員の教育現場での裁量権が大きくなり、国の定める学習目標を達成しさえすれば教え方を自由に決められるようになりました。

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フィンランドの学校教育制度

フィンランドの教育制度は日本とは異なる部分が多くなっており、7~16歳が通う「総合学校」が義務教育にあたります。総合学校を卒業した後は、大学進学のための「普通高校」か「職業高校」のどちらかを選択します。また、総合学校が始まる前の1年間「プレスクール(就学前教育)」に通うことも義務教育に含まれています。

普通高校(卒業まで2〜4年)はクラス制ではなく、大学のように自らの学習計画を元に必要単位を取得していく形式です。卒業にあたっては、卒業資格試験として全国統一テストがあり、結果は大学の合否判定に使われます。

職業高校(卒業まで2〜4年)は学校や実際の職場などで職業訓練を受ける形式です。フィンランドの社会では「資格」が重視されており、レストランで給仕をするのにも資格が必要であるほど社会に出て働くことに資格の取得は欠かせません。職業訓練としては、エンジニアリング・福祉・美容師などの50を超える資格を得ることができるようになっているようです。

フィンランド教育

高等教育機関は、学術を学ぶ「大学」と実学を学ぶ「応用科学大学(ポリテクニック)」の2種類で、2017年にフィンランド外務省が発行したパンフレットによると、全国に14の大学と25の応用科学大学があります。

フィンランドの大学は、学士課程と修士課程がセットになっており学士課程で3年、修士課程で2年学びことが特徴です。一方、応用科学大学の学習期間は、3年~4年半で学士号を取得後、少なくとも3年以上就労すれば、修士課程に出願することができます。

フィンランド教育の主な特徴

大学まで教育費が無料

フィンランドでは「自分の可能性を最大限に高め、夢を実現したり希望の仕事に就くうえで役立つ、優れた教育を受ける権利がある」という方針の元、就学前の教育から高等教育まで家庭の所得に関係なく、誰でも平等に学ぶ機会が与えられており学費だけではなく教科書や給食や送迎に関しても無料になっています。

教員の質が高い

教師こそ教育の要だと考えられているフィンランドでは、教員の資格をもつために修士号が必要です。フィンランドにおいて教師は弁護士や医者と並ぶステイタスのある職業で、大学の教育学部に入学したり、教職課程を履修したりする際の選考に合格できるのは、総合学校の担任希望者でわずか10%と狭き門になっています。

アクティブラーニング型の授業

学校内は1クラス約20名の生徒と教師、アシスタントという構成になっており、各個人が自分に合わせた学習目標に向かって調べ物や作業を行い、教師やアシスタントは子供の学習状況に合わせたフォローをします。
教師の役割は学習テーマを決めたり学習方法を教えたりすることで、勉強そのものは子供主体で進める体制になっています。教師があえて教えない授業が子供が自ら学び、知識を積み上げる重要な要素になっていると言えます。

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授業日数と宿題の両方が少ない

フィンランドの年間授業日数は、日本より40日少ない年間190日程度で世界有数の少なさになっています。家庭学習より学校での学びが重要視されており、宿題は少なく勉強漬けにすることなく十分な休息時間が与えられるようになっています。
勉強は短時間で済ませたほうが学力が上がると一般財団法人基礎力財団理事長の陰山英男氏もいっており、小学校高学年では、2時間程度をピークに、3時間、4時間と学習時間が増えるにつれて成績が落ちていったという研究結果もあります。

試験による成績評価ではなく個性を尊重がされる

日本では学習の定着度を確認する目的で試験が用意されていますが、フィンランドでは基礎教育の期間において試験は行われていません。また、フィンランドの教育現場では、人格と同じように発達の仕方にも個性があると捉え、子供のある側面だけ評価することに否定的で総合学校6年は成績表も存在しません。

競争による順位づけや優劣は、客観的な評価として受け止められ目標設定をしやすくなりますが、劣位としての評価は自尊感情を下げ、子供のポテンシャルまで失わせかねないことを踏まえています。基礎教育の段階では自身の考えや自身の決めた目的のために勉強するということを教えることを重視し、子供自身が定めた目標をどれだけ達成できたかを、教師と一体となって振り返ることで評価をしています。

各個人に合わせられた教育速度

フィンランドでは基礎教育の過程でも学習目標に到達していないと判断された場合には留年が用意されています。その場合には、専門の教師がついて特別教育を受けることができ、子供それぞれのペースで学びを進められるようになっています。

生きるために大切なことを学ぶ

世界には多種多様な人が存在しそれぞれが自分らしく生きることは当然であり素晴らしいことであることを教えられます。進学や就職のためでなく、生きるために最も大切な「どのように生きたいか」を常に問われ考えさせられることが当たり前に行われています。

フィンランド教育

フィンランドが抱える教育上の問題点

2014年にヘイノネン氏が、リクルートワークス研究所発行の雑誌「Works」のインタビューで「学校における試験のあり方」について改革が必要だと述べています。試験で良い点を取らせることが教育の目標ではなく、学習のプロセスが大事だと考えるフィンランドですが、現実は試験の成績で進路が決まる以上、どうしても「よい点を取る」ことが勉強の目的になってしまっているようです。

また、教科教育学などを専門とする北海道大学の鈴木誠教授が発表した論文によると、普通高校の卒業資格試験に臨む生徒を対象とした、年5,000ユーロ(約64万円)の費用がかかる学習塾が登場しており、「男女、家族の背景、財力は関係なく、万人に教育の機会を与える」という前提が崩れかねない競争の出現が起きているといいます。

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フィンランド教育に関するおすすめ書籍等

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