小学校のプログラミング教育が必修化される理由と育む能力を解説

約10年の周期で変わる「学習指導要領」が小学校では2020年度、中学校では2021年度で改定され、新しくプログラミング教育が必修化されることになりました。本記事で改めて小学校プログラミング教育の概要や具体的な指導内容について細かく紹介します。

プログラミング教育

学習指導要領とは、文部科学省が定める初等教育(小学校)と中等教育(中学校)の教育課程の基準をまとめたもので、各学校の教科書や時間割などをつくる上で礎となるものです。

小学校でプログラミング教育が必修化される理由

学習指導要領改定の背景

プログラミング教育必修化の前に学習指導要領改定の背景を抑えておきましょう。学習指導要領改定の方向性について審議した中央教育審議会の答申によれば、情報化(第4次産業革命の到来など)やグローバル化によって社会が人間の予測を大きく超えて変化していくとしています。

これら急速な社会変化を受けて学習指導要領改定は、予測できない変化を受け身ではなく前向きに受け止め、主体的に向き合い・関わり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生を創り手となるための力を子どもたちに育む学校教育の実現を目的に行われました。

第4次産業革命とは、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)、膨大かつ多様なデータ群を取り扱うビッグデータの技術、AI(人工知能)やロボットといった各種デジタル技術の発展により、産業のみならず労働や生活などあらゆる物事を根底から変える新しい産業時代です。

小学校でプログラミング教育を導入する目的

文部科学省が公開している「小学校プログラミング教育の手引」の中で「コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこと」と記載されているように、子供の将来の生活においてコンピュータと無関係ではいられないためです。

Advertisement

小学校プログラミング教育のねらい

小学校におけるプログラミング教育の目的は、プログラマを育成するためではなく「小学校プログラミング教育の手引」によれば大きく3つに分かれます。

  1. プログラミング的思考を育む
  2. 情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることを知る。身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用して、より良い社会を築いていこうとする態度などを育む
  3. 各教科等で実施する場合には、教科等での学びを確実なものにする

プログラミングに取り組むことを通じて、子供(児童)がおのずとプログラミング言語を覚えたり、技能を習得したりすることは考えられますが、それ自体をねらいとするのではなく、プログラミングを行う際に必要な論理的な思考に焦点をあてていることが重要です。

小学校プログラミング教育で育む資質と能力

学習指導要領で「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」と「学びに向かう力、人間性等」の3つに分類されて定義されています。

知識及び技能

身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くことです。
具体的には、コンピュータに意図した処理を行うよう指示をする活動を通して、次のような気付きを与えることに重点が置かれています。

  1. コンピュータはプログラムで動いている
  2. プログラムは人が作成している
  3. コンピュータには得意なこと、できないことがある
  4. コンピュータが日常生活の様々な場面で使われ、生活を便利にしている
  5. コンピュータに意図した処理を行わせるためには必要な手順がある

思考力、判断力、表現力等

発達の段階に即して、コンピュータの働きをよりよい人生や社会づくりに生かそうとする主体的な態度を涵養することです。具体的には、身近な問題の発見・解決に、コンピュータの働きを生かそうとする、コンピュータ等を上手に活用してより良い社会を築いていこうとしたりする態度の育成に着目しています。

また、プログラミングを通して他者と協働しながら粘り強くやり抜く態度の育成、著作権等の自他の権利を尊重すること、情報セキュリティの確保に留保したりするといった、情報モラルの育成も重要であるとしています。

プログラミング教育

学びに向かう力、人間性等

発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成することです。
プログラミング的思考とは、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号をどのように組み合わせたらよいか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、よりよい活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力をいいます。

小学校プログラミング教育の実施方法

プログラミング教育が必修化されるといっても、新しく「プログラミング」という教科が設置されるわけではありません。小学校学習指導要領総則の中でポイントが下記2つ記述されています。

  1. 情報活用能力(情報モラル)等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図る
  2. 情報活用能力の育成を図るため、児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動を計画的に実施する

プログラミングに関する学習活動の分類

主には既存の教科(算数や理科、総合的な学習の時間)の中で扱われることになりますが、どの学年の、どの教科で何時間くらい行うかといった具体的な内容は、コンピュータの整備状況が異なることもあり各教育委員会や各小学校の判断に委ねられています。

そのため、文部科学省がどのようなプログラミング学習を行うべきか、その活動内容を示した「小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類」を公表しています。具体的に、教育課程内と教育課程外に分けて6つに分類しており、多様な形で実施していくことを求めています。

A:学習指導要領で例示されている単元等で実施するもの
B:学習指導要領に例示されていないが、学習指導要領に示されている各教科等の内容を指導する中で実施するもの
C:各学校の措置により実施するもの
D:クラブ活動など、特定の児童を対象として実施するもの
E:教育過程外:学校を会場として実施するもの
F:教育過程外:学校以外を会場として実施するもの
Advertisement

小学校プログラミング教育の具体的な指導例

文部科学省・総務省・経済産業省などが連携して設立した「未来の学びコンソーシアム」が運営する「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」に具体的な指導例が掲載されています。下記に特に挙げられることの多い算数と理科の事例を挙げて紹介します。

例:小学5年生算数:正多角形の作図

プログラミングを用いて、正多角形(正方形、正三角形、正六角形等)をかく方法を考える学習活動です。辺の数が多い正多角形でもコンピュータを使うことで容易にできることに気付くことができるようになります。

例:小学6年生理科:電気の性質や働きを利用した道具

人感センサーや照度センサーを使って、自動で扇風機を制御するプログラミングを組んで効率的な電気の使用方法を考える学習活動です。人を感知するセンサーで制御された照明などが住宅などの身近なところで活用されていること、電気を効率的に利用できるよう工夫されていることに気付くことができるようになります。

プログラミング教育

理解を深めるためにおすすめのサイト等

小学校プログラミング教育の手引|文部科学省
小学校プログラミング教育に関する研修教材|文部科学省
未来の学びコンソーシアム|プログラミング教育ポータルサイト