STEM教育とは|特徴や重要視された背景から海外事例まで徹底解説

STEM教育という言葉が小学校段階でのプログラミング教育必修化に合わせて聞かれることが多くなりました。アメリカやシンガポールでは国家戦略として進められるSTEM教育について深く掘り下げて紹介します。

STEM教育|ステム教育

STEMの意味は理系の教育分野の総称

もともとは、アメリカの科学教育の充実に取り組んできた国立科学財団(NSF)が1990年代に用いた「SMET」が元になっており、2001年に呼称がSTEMに変更され今に至ります。STEM(ステム)は、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの4つの頭文字を組み合わせた単語です。

STEM教育は、科学・技術・工学・数学の4つの分野に力を注ぎ、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を育成するための教育システムをいいます。

近年では、STEM教育にArt(ビジュアルアートやパフォーミングアート)もしくはArts(リベラルアーツ)を足したSTEAM教育、Roboticsを足したSTREAM教育、environment(環境)を足したeSTEM教育も存在します。

STEM教育が世界に広がった理由

STEM教育の広がりは、2009年にオバマ元大統領が就任間もない頃に演説の中で、STEM教育の重要性を強調したこと、2011年に理数系人材の育成をアメリカの国家戦略の優先課題に位置付け、具体的な施策を発表したことから始まります。

また、2015年STEM教育法成立に当たりSTEM教育の定義を拡張し、コンピュータサイエンスを含めることが明示されたことも大きく、世界中でプログラミング教育重視の運動が起きた時期と重なります。

STEM教育|ステム教育

第3次産業革命による情報化、第4次産業革命によるAI・IoT化が始まったことで、身の回り全てがコンピュータで制御される社会を見据えて、誰もが基礎教養としてSTEMリテラシーを備えるべき必要性が世界で格段に高まってきたこともあります。

総合コンサルティング会社「アクセンチュア」が2016年11月に発表した調査によれば「2035年には人工知能によって先進12カ国の経済成長率が倍増し、労働生産性は最大40%向上する」とされています。急速なテクノロジーの進歩により仕事の効率化が進み単純作業が機械化、人間の仕事は創造性・生産性の高い業務に変わります。
高度化された社会に対応できる知識と技術を持つ人材の育成は、世界における科学技術の優位性を保ち維持する国家戦略となるためSTEM教育が重要になるのです。

国家で進められるSTEM教育の全体像

STEM教育が語られる文脈では、子供の理数教育・プログラミング教育を指すことが多くなっていますが、何も子供の教育の拡充だけが中心にあるわけではありません。STEM教育は、イノベーションを創出するトップ人材の育成、全産業のAI化に対応できるミドル人材の育成、全国民のリテラシー強化の総合的なものを指すことになります。

トップ部分では、経営者層のリテラシー強化、研究機関整備が必要になりますし、ミドル部分では大学機関の強化、全国民においてはSTEM知識を基礎教養として身につけてもらう教育の整備などあらゆる施策に取り組む必要があります。

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世界でも進んできたSTEM教育の現状

アメリカの事例

米国教育省の調査によると2010年から2020年の間にSTEM関連職業が産業全体で14%増加することが見込まれています。それら労働人口予測とSTEM分野の学位取得者推移を踏まえて、アメリカではSTEM分野の学位取得者数が100万人不足すると予測されています。これらを受けて、2013年に発表された「STEM教育5ヶ年計画」と「NGSS(次世代科学スタンダード/Next Generation Science Standards)」が有名です。

STEM教育5ヶ年計画では、2020年までに初等・中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成、今後10年間でSTEM分野の大学卒業生を100万人増加、大学卒業生にSTEMの専門知識や応用研究を学ぶ訓練制度の提供など年間30億ドルの予算を投下しています。

NGSSは初等中等教育の科学分野の期待達成内容を改訂し、科学に関する事実を覚えるのではなく科学を実行することによって科学を学べるようにすることを目指されました。また、2017年にSTEM教育にアートやデザインを統合すること法改正がなされ、STEM法からSTEAM法に変化しました。

STEM教育|ステム教育|アメリカ

EU/イギリスの事例

EUでもSTEM教育プラットフォームである「EU STEM Coalition(Web上のコミュニティ)」を2010年に創設し、各国のSTEM教育の事例共有や産官学連携による加盟国のSTEM戦略構築の支援が行われています。

イギリスでは2004年に「科学とイノベーションの関する投資フレームワーク2004-2014」を打ち出し、STEM教育に関する具体的目標を示す10ヶ年計画が示されました。2006年には、STEM推進組織「STEMNET」が立ち上がり、学校と連携をしながらSTEM教育に関する動機づけを行うことを目的に様々な活動が行われるようになりました。

その後、2014年には世界で初めて5歳から16歳までのプログラミング教育を義務化、2015年にBBC(英国放送協会)が11歳〜12歳の子供全員に「Micro:bit(マイクロビット)」を無償で配布したことは話題になりました。

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シンガポールの事例

シンガポールでは、1965年の独立以降、理数教育に力を入れてきており、STEM教育は、シンガポール最大の科学館であるサイエンスセンターが中心になって推進されています。サイエンスセンターは、シンガポール政府の協力のもと、中学校の全ての生徒たちにSTEMプログラムを提供するための組織「STEM Inc.」を2014年に立ち上げており、小学校にもSTEM教育を試験的に導入する事例も出てきています。

STEM教育|ステム教育|シンガポール

中国の事例

中国はAIの教育利用を国家戦略に据えており、東呉証券によれば中国のSTEM市場規模は2017年の約96億元(約1,400億円)から、2022年には520億元(約7,800億円)まで拡大すると予想されているほど巨大です。様々なSTEM教育企業が出てきており、mBot(エムボット)等を販売するMakeblock社エディオンロボットアカデミーで使われているKrypton(クリプトン)等を販売するabilix社が有名です。

中国政府が2015年にSTEM教育について初めて言及し、2016年には「教育信息化第13回5カ年計画」でSTEM教育を促進する方針を発表、2017年に「義務教育小学校科学課程標準」改訂にあたって、STEM教育の実践が義務教育課程内に盛り込まれました。

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日本のSTEM教育を取り巻く現状

日本も他国と同様に高度IT人材の不足を課題にあげており、経済産業省によれば2030年に55万人が不足するとされています。
2019年3月に政府はAI戦略を発表し、全ての高校卒業生の理数・データサイエンス・AIに関する基礎的なリテラシーの習得、年間約25万人のデータサイエンス・AIを応用できる人材の育成、年間約2,000人のデータサイエンス・AIを駆使してイノベーションを創出しできる人材の発掘・育成等を具体的な目標を掲げました。

また、2020年から順次改訂される小学校・中学校・高等学校における学習指導要領においては、プログラミング教育の必修化、STEM教育を筆頭に世界的に理数教育の充実や創造性の涵養が重視であるとしています。さらには、先進的な理数系教育を実践する高校を支援する「スーパーサイエンスハイスクール」、科学的探究能力を有する傑出した国際的科学技術人材の育成を行う大学を支援する「グローバルサイエンスキャンパス」等にもより力が注がれています。

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